002 アサイチ撮影→2時間で編集→最速15:00 UP !

何を最優先するか

 デパ地下の活気はいつも刺激的である。モノが動いていることを肌で感じる現場だ。それは1日の休みもなく繰り返されていく。些細なものから唖然とすることまで、様々なドラマがある。ここでは、時間は倍速で流れているのかもしれない。
 つとめて冷静さを心がけているが、周りの急ぎ足の空気につい気持ちが焦ることがある。もっとものんびりなどしていられなのだから当然ではあるが、バランスを整えるには、少々慣れも必要である。
 開店準備に追われる地下食品売場を舞台に、毎週水曜日にスタートする催しコーナーの撮影を続けてきた。タイトルは様々だ。「九州のうまいもの会」「北陸の味くらべ」「えんてつセレクション」「大おせち市」など、これらが1週間単位で入れ替わっていることを知っている人は意外に少ないのかもしれない。
 こうした情報は、なかなかチラシの中では訴えにくい。扱い枠も小さくなる。1週間の売上は想像よりかなり高めだったが、それでも婦人服や宝飾品、化粧品にチラシの大半が占められるのは仕方のないことだ。『チラシに載せきれない溢れてしまった情報を動画で伝えたい』というのが、遠鉄鉄百貨店の希望である。
 しかし、チラシは前もって準備され、水曜日からはじまるセール・販売の当日に新聞折り込みで配布され告知されるが、動画は、そうはいかない。当日、なりゆきに任せて取り組むしか方法がない。事前準備なしでアサイチに撮影し、それを2時間で編集して15:00にはYou Tubeにアップロードする・・・。しかも、それを毎週・・・。まだ誰もやったことがない取り組みなら是非、という思いがあった。最優先させることは、間違いなく時間だ。

仕組みをつくろう

 イメージだけが完成しても、その仕組みを確実につくらなければ流れていかない。どこかで歪みが発生して崩壊する。はじめたからには、終了させたくないという想いがあった。実は今回のオファーは、それまでUSTREAMのライブ中継を手がけていたことが、出発点である。スピード感のある取り組みを実現するために呼ばれたと言ってもいい。しかし、USTREAMとは異なり、アップロードまでには編集という不確定な要素が伴う作業が介在する。これをどう実現するか・・・。
 撮影は、約1時間。10:00の開店を挟んだ前後30分間である。もちろん9:00からスタートできれば申し分ないが、その時刻には、まだ出店者が揃わない。この、1日の中でも一番慌ただしい時間に売場でカメラを回そうと画策するのは、なかなか勇気がいる。出店者を盛り上げることも大切になる。これは、結果的にはMCに頼ることになるのであるが、その点では制作側の柔軟性が、実は一番大事なのかもしれない。
 3分の動画のために撮影する動画は30分〜40分程度。つまり、1/10しか使用しない。その3分の中で4〜5店を紹介するので、1店あたり約30秒〜35秒。このズレもできれば最少に抑えたい。
 現場では、聞きたいことだけを聞いておしまい、というわけにはいかない。Q&A形式ほど単純ではない。インタビューは会話である。そんなにドライには割り切れない。したがってMCの力が頼りになる。何気ない会話、直前の短時間の取材でポイントを探り出す必要がある。この能力が実は何より大切である。会話をスムーズに演出するために、MCは事前にコンパクトに情報を収集しているのである。
 こうした呼吸が上手く回りはじめると、コトは案外スムーズに進行する。持ち場と役割分担、時間の把握の中で最善のアプローチに努めることができる。仕組みは、無理矢理ではダメなのである。仕込みは、自然とそうなることが望ましい。強引な取り組みは歪みを生み、ギクシャクした空気をつくる。
 撮影が完了したら、編集が待っている。もちろん、一旦事務所に戻ってじっくり取り組む、というわけにはいかない。そこで、遠鉄百貨店のオフィスフロアを利用させていただくことになった。

これは「ニュース」である

 遠鉄百貨店のオフィスフロアには、かなりの人数のスタッフが仕事に従事している。売場に出ない支援側にもスタッフは実にたくさんいるのだ。
 フロアの一角のテーブルを借りてパソコンを広げる、通りがかった人達が興味深そうに覗いていく。別に見られるのはイヤではない。むしろ、「今、これをやっています」と説明したいくらいである。また、見られていることが緊張感にもつながる。テンションを維持するための原動力にもなっている。
 動画をパソコンに取り込むのに20分〜30分。この間、待つしかない。撮影した内容を思い出して作戦を練る・・・ということが、実はなかなかできない。なぜなら、だいたいのことを、一瞬忘れている。それが再びパソコン上で再生された時に、あらためてイメージが生成されるから不思議だ。
 編集は、単語単位と言ってもいい。印象的な言葉をできる限りピックアップして耳から入る情報をつくる。その他は、お店の人の人柄が反映されることを心がけている。商品は、実はそれほど重要ではないと考えている。そう、これは「ニュース」なのである。動画パッケージとしての完成品をつくっているのではない。素材を集めて「ニュース」を流そうとしているのである。大事なことは臨場感であり売場のホットな空気感である。お店の方は、この1週間のために、大阪や九州、沖縄、東北、北海道から来ているのである。そのイキイキとした姿を映すことがなによりも大事なのである。
 編集を無事に・・・実際に2時間で完了したケースは稀である・・・済ませた後、一度担当者確認を受ける。一番恐い瞬間だ。その恐さとは、忘れ物をしていないか、という恐さである。
 確認はほとんどの場合、一度。テロップミスなどで修正することもあるが、ここでつまづくと再編集はかなりハードルの高い作業になってしまうので、確実に納得点に近いレベルで仕上げなければいけない。幸い、これまでハズしたことは、ない。遠鉄百貨店側とのズレがないことが、実は最大の安堵である。
 こうして仕上げた動画をwmv形式に変換してDVDに書き込み、納品完了となる。その場でアップロードも、もちろんできるのであるが、実はできあがった動画はYou Tubeだけではなく遠鉄百貨店内の映像モニターや新館の「ソラモ」側に設置された200インチの大型ビジョンにも流すため、DVDで納品している。この他、西鹿島線の新浜松駅のホームに設置されたモニターにも流れることになる。
 つまり、ひとつの素材を複数のメディアに提供しているのである。この点が、テレビCMがテレビCMのみで完結してしまうのと大きく違うのである。


 たった1日で完成する動画。従来の映像制作会社が聞いたら呆れられそうであるが、これが今の現実である。動画コンテンツの価値はスピード感。コンテンツ・ファーストを考える時、それはひとつの重要な基軸である。